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転職で失うのは月給だけじゃない|中途入社の見えない待遇差を全部計算した

氷山の図解 お金の計算

中途入社の私と、同い年の新卒入社モデルの差を全部計算したら、額面で約3,700万円、手取りで約2,900万円でした。年収差は年100万円。でも、本当の差は月給の外側にありました。賞与、退職金、有給休暇、永年勤続の表彰。この記事では、その「見えない待遇差」を一つずつ数字にします。そして最後に、この差をどう埋めるかまで計算します。

この記事でわかること

  • 中途入社の待遇差が「年収差×年数」では済まない理由
  • 賞与・退職金・有給・表彰まで含めた総額の実例計算
  • 退職金の差が手取りにそのまま直撃する仕組み(退職所得控除)
  • 転職前に確認すべき「総処遇」チェックリスト
  • 手取り差2,900万円を逆転する現実的な計算

前提|30代の終わりに転職した私と、同い年の新卒モデル

私は30代の終わりに、今の会社(製造業の大企業)へ中途入社しました。比較するのは、同い年で新卒からこの会社にいる標準的なモデルです。前提はシンプルにします。年収差は年100万円。この差が定年までの25年間続くとします。昇進で逆転する可能性は、ここでは考えません。中途入社が標準の昇進レーンに乗りにくいのは、多くの伝統的大企業で共通の構造だからです。

年収差100万円×25年=2,500万円。ここまでは誰でも計算できます。問題は、ここから先です。

見えない差①|賞与は「月給差の増幅装置」

多くの会社で、賞与は基本給に連動します。つまり、月給に差があると、その差は年2回の賞与で自動的に増幅されます。たとえば月給差が6万円なら、月給だけで年72万円。賞与が基本給の5か月分なら、さらに30万円が上乗せされ、合計で年102万円の差になります。冒頭の「年収差100万円」は、実はこの増幅込みの数字です。月給の差を見て「まあ数万円か」と思った人ほど、賞与でやられます。

見えない差②|退職金は勤続年数で決まる(差は約1,170万円)

ここが本丸です。退職金は多くの会社で、勤続年数と退職時の基本給で決まります。そして勤続年数の伸び方は直線ではありません。カーブは後半ほど急になります。つまり、長くいる人ほど加速度的に増える設計です。

私のケースで試算しました。新卒から勤め上げるモデルの退職金が約2,000万円。一方、30代の終わりに入社した私の見込みは約840万円。差は約1,170万円です。同じ会社で、同じ定年まで働いてもこの差です。理由は単純で、私は勤続カーブの「急になる後半」に到達する前に定年が来るからです。

しかも、この差は手取りにほぼそのまま直撃します。退職金には退職所得控除という大きな非課税枠があり(詳細は国税庁タックスアンサーNo.1420)、私も新卒モデルも控除枠の範囲内に収まります。つまり両者とも税金はほぼゼロ。差額1,170万円は、丸ごと手取りの差になります。給与の差は税と社会保険で3割ほど圧縮されますが、退職金の差は圧縮されません。ここが見えない待遇差の中で一番重い理由です。

見えない差③|有給休暇も、実はお金である

中途入社の有給は、少ない日数からのスタートです。私の場合、新卒からの在籍者に追いつくまで数年かかりました。その間の差を累計すると約3週間分。1日あたりの給与価値で換算すると、約29万円相当になります。

「休みの日数くらいで大げさな」と思うかもしれません。でも、有給は「給与をもらいながら休める権利」です。時間をお金に換算する習慣のある人なら、これが実質的な報酬差だとすぐ分かるはずです。

見えない差④|永年勤続の表彰は、長くいる人だけのボーナス

多くの伝統的な会社には、勤続の節目ごとに特別休暇や旅行券が出る制度があります。勤続40年に届く新卒入社者はフルで受け取れますが、中途入社は節目の多くに届きません。私の試算では、この差が約25万円相当。金額としては小さい方ですが、「長くいること自体が報酬になる」という制度思想がよく表れている項目です。

合計|額面3,724万円、手取り2,904万円

項目額面の差手取り相当の差
年収差(100万円×25年)2,500万円約1,680万円
退職金差約1,170万円約1,170万円(非課税枠内)
有給休暇差(累計約3週間)約29万円約29万円
永年勤続表彰差約25万円約25万円
合計約3,724万円約2,904万円

年収の差は税金と社会保険料で約3割圧縮されます(額面100万円の差は、手取りでは年約67万円)。それでも合計は手取りで約2,900万円。家が一軒買える差です。そしてこの差は、私の働きぶりではなく、入社した日付でほぼ決まっています。

転職を考えている人へ|「総処遇」で比較してほしい

誤解しないでほしいのですが、この記事は「転職するな」ではありません。「月給と年収だけで比較するな」です。オファー面談で提示されるのは、たいてい月給と想定年収だけ。でも本当に比較すべきは次の5点です。

  • 賞与の算定方法(基本給連動か、業績連動か)
  • 退職金制度の有無と計算方法(勤続カーブの形)
  • 有給の初年度付与日数と最大到達までの年数
  • 勤続系の福利厚生(表彰・休暇・住宅補助の勤続条件)
  • 中途入社者が標準昇進レーンに乗った実績があるか

特に退職金は、面談で聞きにくいのに一番大きい項目です。「退職金規程の計算方法を教えてください」の一言を、恥ずかしがらずに言ってください。2,900万円の質問です。

で、私はどうするか|制度は変えられない。蛇口は増やせる

この差に気づいたとき、正直、しばらく腹が立ちました。でも、会社の制度は私には変えられません。変えられるのは、会社の外側だけです。

そこで計算してみました。手取り差の約2,900万円を、自力で埋めるとしたら。まず、複利シミュレーションの記事で計算した月4万円コース(年利7%)では約1,920万円。健闘しますが、約1,000万円足りません。答えは、月6万円の積立投資です。年利7%で20年間続けた場合の資産額は31,582,927円。約3,160万円ですから、2,900万円の差を逆転できる計算になります。

入社日で決まった2,900万円は、取り返せない過去です。でも月6万円は、今日から積める未来です。私が残業を断り、評価に一喜一憂するのをやめて、家計と積立に力を入れている理由はこれです(評価に納得できなかった夜の話)。

よくある質問

Q. 中途入社は転職しない方がよかったということ?

いいえ。前職に残った場合の生涯賃金と比較しなければ、その結論は出せません。この記事の主張は「比較の物差しを年収から総処遇に変えよう」です。

Q. 退職金の差はなぜ手取りにそのまま出るの?

退職所得控除(勤続20年超は年70万円ずつ枠が増える)が大きいため、一般的な水準の退職金は非課税枠に収まることが多いからです。給与のように税・社会保険で3割引かれない分、差がそのまま残ります。

Q. 数字は正確なの?

私自身のケースを、会社の制度に沿って試算し、金額を丸めて掲載しています。会社や制度によって差の大きさは変わるため、あくまで「構造の実例」として読んでください。

まとめ|見えない差は、見た人から埋められる

中途入社の待遇差は、月給の裏側で静かに膨らみます。賞与で増幅され、退職金で確定し、有給と表彰で駄目押しされる。合計は手取りで約2,900万円でした。でも、この数字を知ったからこそ、月6万円という具体的な対抗手段が見えました。見えない差は怖い。でも、見えた差はただの計算問題です。私は今日も、自分の蛇口を増やす方に時間を使います。

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